生き物の中には、毒の成分を持つ動物や植物が数多くいます。毒を持つ生き物たちは、その毒で敵を攻撃したり、外敵から身を守ったりしていて、これらをまとめて自然毒といいます。
自然毒による食中毒は、食中毒菌による食中毒と比べると件数・患者数はそれほど多くはありませんが、フグ毒やキノコ毒のように致命率(死亡する確率)がとても高いものもあるので、注意が必要です。
フグの毒は、テトロドトキシンと呼ばれる神経毒で、致死率がとても高いものです。主に肝臓・卵巣・皮の毒が危険ですので、食べることのできるフグの種類、部位、漁獲海域(魚を取る場所)が決められています。
フグ毒による毒の症状は、食後20分〜3時間程度にあらわれ、重症の場合は呼吸困難で死亡することがあります。
フグの調理については専門の職人(ふぐ処理師)しかできませんので、それ以外の人は絶対にフグの調理はしないでください。
主にホタテやアサリなどの二枚貝が、毒素を持った植物プランクトンをエサとして食べることによって、貝の中に毒が溜まるものです。貝毒には2種類あり、体の麻痺・めまい・頭痛・重症の場合は死に至る麻痺性貝毒と、下痢・吐き気・おう吐などを引き起こす下痢性貝毒です。
安全な貝が出荷されるように、貝毒の発生について監視が行われていて、出荷前の検査で基準値をこえる場合には出荷が制限されます。
毒をもったキノコや植物による食中毒は毎年起こっていて、亡くなった方もいます。その一番の原因は、食べられるキノコや植物と間違えて、毒があるものを食べてしまうことです。正しい知識がないまま、山に生えているキノコや庭の植物を食べることはとても危険で、専門家でも判断が難しいとされています。
毒キノコや毒がある植物を食べると、下痢やおう吐の他、しびれや幻覚・錯乱などを起こし、重症の場合は死亡することもあります。
知らないキノコや植物を食べることはとても危険ですので、確実に判断できないものは食べないようにしましょう。
毒キノコ例:ツキヨタケ、テングダケ、クサウラベニタケ、ニセクロハツなど
有毒植物例:スイセン、スノーフレーク、イヌサフラン、クワズイモなど
ソラニンは、ジャガイモの芽や緑色になった部分、十分に育っていない小さなジャガイモに特に多く含まれる毒素です。これらを多く含むジャガイモを食べると、吐き気や下痢、おう吐、腹痛、頭痛、めまいなどの症状が出ることがあります。
ジャガイモの芽とそのまわりの部分を取り除き、皮に緑色の部分があったら厚めにむき、そのまわりの部分もしっかりむきましょう。十分に育っているかは見た目で判断することが難しいため、一度にたくさん食べたり、皮ごと食べたりしないようにしましょう。
ヒスタミンは、特にカツオやマグロ・ブリなどの赤身魚やその加工品に含まれるヒスチジンから、ヒスタミン産生菌によって生成される物質です。ヒスチジンが多く含まれる食べものを常温に置いておいたりすると、食品に付いたヒスタミン産生菌が増えて、ヒスタミンがつくられます。
ヒスタミンがたまった食品を食べると、1時間以内に口のまわりや耳たぶが赤くなったり、舌やくちびるへのピリピリとした刺激・頭痛・じんましん・発熱などを起こします。症状は、6〜10時間で回復することがほとんどで、抗ヒスタミン剤が効果的です。
ヒスタミンは加熱しても分解されず、調理で取り除くこともできません。
赤身魚や干物などを含む加工品を買ったときは、常温に放置せず、すぐに冷蔵庫にいれるようにし、新鮮でない刺身などは食べないようにしましょう。
また、ヒスタミンを多く含む食品を口にいれたときに、くちびるや舌先にピリピリとした刺激を感じることがあります。違和感を感じたら、食べないようにしてください。