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食中毒予防の6つのポイント

家庭の食中毒予防

HACCPに沿った衛生管理を家庭でも!

平成30年(2018年)6月、食品衛生法が15年ぶりに大幅に改正されました。

改正の主な理由の一つは家族構成等の変化により家庭の食環境が外食・中食(既成のそうざい・弁当、配食サービス等)が変化していること、二つ目には食に起因する健康被害(食中毒)の下げ止まり状況、三つ目には海外の食品衛生状況との整合性などです。

改正の重要な目玉の一つとして、すべての食品営業者にHACCPに沿った衛生管理を義務付けたことです。営業の種類や規模によっては国際基準レベルの管理を要求されますが、小規模な営業者については業界団体等が作成し、厚生労働省が承認した手引書に則った衛生管理をする、との方向で進んでいます。

HACCPと聞くと、宇宙食を作るわけじゃないのになんで我が家で?とびっくりする方もあると思います。しかし家庭の食事が原因の食中毒は意外に多いのです。あなたの大切な家族が、ここ一番、という時に食中毒ではたいへんです。

食中毒は家庭でも発生します

毎年、厚生労働省に報告のある食中毒事件だけをみても、家庭の食事が原因の食中毒が全体の20%近くを占めています。届出があり、保健所の調査によって確定した事案だけですので、家庭内の平和のため等の取り下げも含め、実際にはもっと多いものと思われます。また、症状が軽かったり、発症する人が1~2人のことが多いことから風邪や寝冷えなどと思われがちで、食中毒とは気づかれない場合もあります。一家全員が寝込んでしまうような事例では重症化したり、死亡する例もあります。

食中毒には、ノロウイルスやカンピロバクターなどによる微生物による食中毒、食品に混入した洗剤や漂白剤などによる化学性食中毒、有毒な植物や毒きのこ、自家調理のふぐなどを食べて発生する自然毒性食中毒などがあります。全食中毒のうち90%程度を微生物による食中毒が占めています。

微生物の性質を知り、対策することで家族の健康を守ります。

家庭でできる食中毒予防の6つのポイント

微生物対策の基本は 「つけない」・「増やさない」・「やっつける」

食品素材はその生産環境によっていろいろな微生物を持って私たちのもとにやってきます。 第1に素材の微生物を調理後の食品に移行させないことが重要です。素材を下処理した後の確実な手洗は重要です。また、私たちの手には黄色ブドウ球菌という食中毒菌の一種が住み着いていることもあり、その意味でも手のケアと手洗いは重要です。

台所の整理整頓清掃等も大切で、HACCPでいう一般衛生管理のポイントに該当するのがこのへんです。第2の食品中の微生物を増やさない、第3の調理工程での十分な加熱はHACCPの重要管理のポイントになります。

じつは家庭においてHACCPに沿った衛生管理はすでに皆さまがやっていることなのです。 意識して取り組むことで一層確実な衛生管理が実現できます。それでも、もし、お腹が痛くなったり、下痢をしたり、気持ちが悪くなったりしたら、かかりつけのお医者さんに相談しましょう。

ポイント1:食品の購入

ポイント1:食品の購入
  • 肉、魚、野菜などの生鮮食品は新鮮な物を購入しましょう。
  • 表示のある食品は、消費期限などを確認し、購入しましょう。
  • 購入した食品は、肉汁や魚などの水分がもれないようにビニール袋などにそれぞれ分けて包み、持ち帰りましょう。
  • 特に、生鮮食品などのように冷蔵や冷凍などの温度管理の必要な食品の購入は、買い物の最後にし、購入したら寄り道せず、まっすぐ持ち帰るようにしましょう。

ポイント2:家庭での保存

ポイント2:家庭での保存
  • 冷蔵や冷凍の必要な食品は、持ち帰ったら、すぐに冷蔵庫や冷凍庫に入れましょう。
  • 冷蔵庫や冷凍庫の詰めすぎに注意しましょう。めやすは、7割程度です。
  • 冷蔵庫は10℃以下、冷凍庫は、-15℃以下に維持することがめやすです。温度計を使って温度を計ると、より庫内温度の管理が正確になります。細菌の多くは、10℃では増殖がゆっくりとなり、-15℃では増殖が停止しています。しかし、細菌が死ぬわけではありません。早めに使いきるようにしましょう。
  • 肉や魚などは、ビニール袋や容器に入れ、冷蔵庫の中の他の食品に肉汁などがかからないようにしましょう。
  • 肉、魚、卵などを取り扱うときは、取り扱う前と後に必ず手指を洗いましょう。せっけんを使い洗った後、流水で十分に洗い流すことが大切です。簡単なことですが、細菌汚染を防ぐ良い方法です。
  • 食品を流し台の下に保存する場合は、水漏れなどに注意しましょう。また、直接床に置いたりしてはいけません。

ポイント3:下準備-1

ポイント3:下準備-1
  • 台所を見渡してみましょう。ゴミは捨ててありますか?タオルやふきんは清潔なものと交換してありますか?せっけんは用意してありますか?調理台の上はかたづけて広く使えるようになっていますか?もう一度、チェックをしましょう。
  • 井戸水を使用している家庭では、水質に十分注意してください。
  • 手を洗いましょう。
  • 生の肉、魚、卵を取り扱った後には、また、手を洗いましょう。途中で動物に触ったり、トイレに行ったり、おむつを交換したり、鼻をかんだりした後の手洗いも大切です。
  • 肉や魚などの汁が、果物やサラダなど生で食べる物や調理の済んだ食品にかからないようにしましょう。
  • 生の肉や魚を切った後、洗わずにその包丁やまな板で、果物や野菜など生で食べる食品や調理の終わった食品を切ることはやめましょう。洗ってから熱湯をかけたのち使うことが大切です。包丁やまな板は、肉用、魚用、野菜用と別々にそろえて、使い分けるとさらに安全です。

ポイント3:下準備-2

ポイント3:下準備-2
  • ラップしてある野菜やカット野菜もよく洗いましょう。
  • 冷凍食品など凍結している食品を調理台に放置したまま解凍するのはやめましょう。室温で解凍すると、食中毒菌が増える場合があります。解凍は冷蔵庫の中や電子レンジで行いましょう。また、水を使って解凍する場合には、気密性の容器に入れ、流水を使います。
  • 料理に使う分だけ解凍し、解凍が終わったらすぐ調理しましょう。解凍した食品をやっぱり使わないからといって、冷凍や解凍を繰り返すのは危険です。冷凍や解凍を繰り返すと食中毒菌が増殖したりする場合もあります。
  • 包丁、食器、まな板、ふきん、たわし、スポンジなどは、使った後すぐに、洗剤と流水でよく洗いましょう。ふきんのよごれがひどいときには、清潔なものと交換しましょう。漂白剤に一晩つけ込むと消毒効果があります。包丁、食器、まな板などは、洗った後、熱湯をかけたりすると消毒効果があります。たわしやスポンジは、煮沸すればなお確かです。

ポイント4:調理

ポイント4:調理
  • 調理を始める前にもう一度、台所を見渡してみましょう。下準備で台所がよごれていませんか?タオルやふきんは乾いて清潔なものと交換しましょう。そして、手を洗いましょう。
  • 加熱して調理する食品は十分に加熱しましょう。加熱を十分に行うことで、もし、食中毒菌がいたとしても殺すことができます。めやすは、中心部の温度が75℃で1分間以上加熱することです。
  • 料理を途中でやめてそのまま室温に放置すると、細菌が食品に付いたり、増えたりします。途中でやめるようなときは、冷蔵庫に入れましょう。再び調理をするときは、十分に加熱しましょう。
  • 電子レンジを使う場合は、電子レンジ用の容器、ふたを使い、調理時間に気を付け、熱の伝わりにくい物は、時々かき混ぜることも必要です。

ポイント5:食事

ポイント5:食事
  • 食卓につく前に手を洗いましょう。
  • 清潔な手で、清潔な器具を使い、清潔な食器に盛りつけましょう。
  • 温かく食べる料理は常に温かく、冷やして食べる料理は常に冷たくしておきましょう。めやすは、温かい料理は65℃以上、冷やして食べる料理は10℃以下です。
  • 調理前の食品や調理後の食品は、室温に長く放置してはいけません。例えば、O157は室温でも15~20分で2倍に増えます。

ポイント6:残った食品

ポイント6:残った食品
  • 残った食品を扱う前にも手を洗いましょう。残った食品はきれいな器具、皿を使って保存しましょう。
  • 残った食品は早く冷えるように浅い容器に小分けして保存しましょう。
  • 時間が経ち過ぎたら、思い切って捨てましょう。
  • 残った食品を温め直す時も十分に加熱しましょう。めやすは75℃以上です。味噌汁やスープなどは沸騰するまで加熱しましょう。
  • ちょっとでも怪しいと思ったら、食べずに捨てましょう。口に入れるのは、やめましょう。

食中毒予防の三原則

食中毒予防の三原則は、食中毒菌を「付けない、増やさない、殺す」です。

「6つのポイント」はこの三原則から成っています。 これらのポイントをきちんと行い、家庭からの食中毒をなくしましょう。 食中毒は簡単な予防方法をきちんと守れば予防できます。

それでも、もし、お腹が痛くなったり、下痢をしたり、気持ちが悪くなったりしたら、かかりつけのお医者さんに相談しましょう。

家庭で行うHACCP ー 宇宙食から生まれた食品の衛生管理手法 ー

宇宙食はどうやって作る?

ロケットに乗って長期間宇宙を旅するとき、宇宙飛行士たちの食事はすべて地球で作ってロケットに積んで行きます。 狭いロケットの中で、しかも宇宙旅行中に食中毒になったら大変です。飛行士たちの食事は絶対に安全でなければなりません。そこで、NASA(アメリカ航空宇宙局)は、食品の安全性を確保するための方法を考え出しました。
これがHACCP(危害分析重要管理点)という方法です。

HACCPとは?

HACCP(Hazard Analysis and Critical Control Points)とは危害分析(HA)・重要管理点(CCP)と呼ばれる衛生管理の手法です。最終製品の検査によって安全性を保証しようとするのではなく、製造における重要な工程を連続的に管理することによって、ひとつひとつの製品の安全性を保証しようとする衛生管理の手法です。

家庭の調理における「危害分析」(HA)とは、食品およびその調理過程に含まれる可能性のある食中毒原因と、その発生防止方法を分析することです。食品と調理過程のどこで食中毒菌による汚染、増殖が起こるか、それを防ぐにはどういう手段があるかを考えることがこれにあたります。
例えばO157やサルモネラによる食中毒などは重大な害といえます。このような害をどのようにしたら防げるかについて手順を明らかにし、調理の際、特に注意を払うべきポイント(正しい調理法)を「重要管理点」(CCP)と呼び、家庭では、本文中の「6つのポイント」がこれにあたります。さらに、HACCPでは、そのような正しい調理方法がきちんと守られているのか常にチェックし、記録します。

家庭で行うHACCP

食品工場で行うHACCPは非常にこと細かく危害分析し、重要管理点を定め、大変むずかしいものとなっていますが、それは、食品工場で作られる食品は長期間かつ広い範囲に流通するため、厳重な衛生管理と安全性が要求されるためで、家庭で作る料理でもその考え方の基本は同じであり、行わなければならないことです。
「きれい」と「清潔」は違います。きれいな台所が必ずしも清潔で衛生的な台所とは限りません。見たところピカピカに光った真新しい台所。でも、食中毒菌はいないでしょうか?いたとしたらそれは、「きれい」なだけの台所です。それよりも、多少古くても、ちょっとした簡単な方法で食中毒菌がいなくなった台所、これが「清潔」な台所です。

きれいに見える食器や手指、ラップに包まれた食品なども必ずしも清潔ではなく、食中毒菌がいる場合もあります。外見だけで安心せず、衛生的な調理、取扱いを心がけましょう。
食中毒の予防には「きれい」なことよりも「清潔」で「衛生的」なことが大切なのです。 食中毒は簡単で基本的な予防方法をきちんと守れば、防ぐことができます。HACCPは最新の衛生管理の考え方ですが、家庭でも実行できます。
さあ、あなたの家庭でもHACCPを行ってみてください。

手を洗うとき

調理を行う場合、次のようなときに手を洗いましょう。

  • 調理を始める前に
  • 生の肉や魚、卵など最近の汚染源となるおそれのあるものを取り扱う前後
  • 調理の途中で、トイレに行ったり、鼻をかんだりした後やおむつを交換したり、動物に触れた後
  • 食卓につく前
  • 残った食品を扱う前

手洗いの方法

調理を行う場合、次のようなときに手を洗いましょう。

  1. 水で手を濡らし、せっけんをつける。
  2. 指、腕をていねいにもみ洗いします。特に指の間、指先をよく洗います。指輪もずらして洗いましょう。また、蛇口全体も洗います。
  3. せっけんをよく洗い流します。
  4. よく水洗いします。
  5. 清潔なタオルやペーパータオルで手を拭きます。