動物や魚などには寄生虫がいます。寄生虫は生きるための栄養や住む場所を他の生き物にたよる生 物で、これを「寄生」といいます。わたしたちが肉や刺身を食べて、寄生虫が生きた状態で人の体に入ると、食中毒になることがあります。
細菌による食中毒とはちがい、食品中で寄生虫が増えたり、ほかの人にうつったりすることはありませんが、お腹が痛くなって下痢をしたり、吐き気がしたりといった症状になることがあります。食べた後、1〜10時間くらいの間にこのような症状があらわれることもありますが、寄生虫のなかにはヒトの健康に影響しないものもいます。
また、すべての肉や魚に食中毒を引き起こす寄生虫がいるわけではありません。
寄生虫による食中毒を防ぐには、肉や魚などはよく焼いたり凍らせることで、寄生虫をやっつけることができます。
アニサキス
[特徴]
アニサキスの卵は、海水中で孵化(ふか)し、オキアミに食べられ、オキアミの体内で成長します。次に、このオキアミを、サバやイカなどが食べることで、アニサキスの幼虫が魚やイカの体内に住みつきます。さらに、この魚やイカを、クジラやイルカなどの海の動物が食べると、その体内で成虫となって卵を産みます。卵は、海の動物の便とともに海水中へ出されます。
アニサキスの幼虫が住みつく魚やイカの刺身を、わたしたちが食べることによって食中毒になります。
サバ・イワシ・アジ・イカ・サンマ・タラ・カツオなどに取り込まれた卵は幼虫となって、魚の内臓にとどまります。魚が死んで鮮度が落ちてくると、内臓から筋肉(わたしたちが食べる刺身の部分)に移動します。体長2〜3pの糸状で、内臓ではとぐろを巻いている状態を目で見ることができますが、筋肉に移動すると、見つけるのは簡単ではありません。
[潜伏時間・症状等]
生きたアニサキスが住みついた魚の刺身を食べてから、だいたい1〜10時間後に、激しい腹痛・吐き気・おう吐・腹膜炎などの症状を起こします。
- 魚を買うときは鮮度のいいものを買って、できる限り早く内臓を取り除きます。
さらに、料理をするときによく見て、できる限りアニサキスを取り除きましょう(魚の内臓を生で食べるのは危険ですのでやめてください)。 - 加熱してたべるときは70℃以上、または60℃なら1分間以上になるようにし、冷凍をするときは−20℃以下で24時間以上保管してください。
- 塩・酢・わさびなどではアニサキスをやっつけることができません。
クドア・セプテンプンクタータ
[特徴]
主にヒラメの刺身に住みついていますが、マグロ・エビ・カンパチなどにも住みついているといわれています。大きさは非常に小さく、肉眼では見ることはできません。大量に刺身中に住みついていると人に症状を起こします。
クドアによる食中毒は、冬から春に少なく夏に多い傾向があります。
[潜伏時間・症状等]
原因となる食品(ヒラメの刺身など)を食べてから数時間と短い時間で食中毒は起こります。激しいおう吐と下痢を起こしますが、長く続くことはありません。
[予防法]
−20℃で4時間以上の冷凍、または75℃5分間以上の加熱で食中毒を防ぐことができます。
その他の寄生虫(サルコシスティス・フェアリー、旋毛虫など)
[特徴]
ほ乳動物と人には共通する病原体・寄生虫が多くあり、害を与える寄生虫はほかにもたくさんいます。
馬 : サルコシスティス・フェアリー
豚・その他野生動物の肉 : 旋毛虫、有鉤条虫、トキソプラズマ原虫など
牛 : 無鉤条虫、肝蛭
- 75℃1分間以上で十分に加熱してください。
- 凍らせることでやっつけることができる種類の寄生虫もいますが、旋毛虫は長期低温でも生き残り、凍らせた野生動物の肉(クマ・イノシシなど)によって重大な被害が出ています。
- 肉を生で食べることはやめましょう。