食品衛生研究所は、食品・化粧品・医薬品等に関する微生物、理化学試験検査を行う、厚生労働大臣登録検査機関です。

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食品の技能比較試験カビ数第2回(2016年11月)結果

公益社団法人日本食品衛生協会 食品衛生研究所は、2016年より食品の技能比較試験事業を開始いたしました。本技能比較試験は、外部の有識者により構成された技能比較試験委員会および技能比較試験技術委員会の助言を得て開発され、国際規格ISO/IEC 17043(技能試験に対する一般要求事項)に基づく、国際的にも適切であると認められる技能試験スキームを目指し、運営されています。

2016年は技能比較試験の第1回のラウンドとして、カビ数を取り上げました。カビは食品衛生において重要ですが、その試験法は標準化されていない状態で、標準品あるいは標準試料もなく、検査者が検査結果が正しいのかどうかを確認することがが困難な状態にあると考えられます。第1回の結果は報告結果の最大値は最小値の400倍という変動の大きい結果となり、カビ数の技能比較試験の必要性が改めて確認されました。そこで、2016年11月に2回目のカビ数の技能比較試験を実施しました。ここでは2回目のカビ数技能比較試験の

を、第1回の結果と比較しながら紹介します。

技能比較試験の今後の予定

2017年は、2回の栄養成分の技能比較試験を予定しており、1回目は終了しました。2回目は7月に実施予定です。また3回目のカビ数技能比較試験を11月頃に予定しております。

技能比較試験のフレーム

技能比較試験の意義

食品の国際規格であるCODEX文書の、CAC/GL27(1997)”Guidelines for the Assessment of the Competence of Testing Laboratories Involved in the Import and the Export of Food”では、食品の輸出入に係る試験所の要件として、以下の4つの項目が挙げられています。

○ISO/IEC 17025 に適合している

適切な技能試験に参加している

○妥当性確認された方法を用いる

○内部品質管理を実施している

また、ISO/IEC 17025 ”General requirements for the competence of testing and calibration laboratories”においても、5.9 試験 ・校正結果の品質の保証 :5.9.1の試験 ・校正の有効性の監視のため品質管理手順の一つとして、「試験所間比較又は技能試験プログラムへの参加」を挙げています。

このように、試験結果を国際的に保証するためには、技能試験への参加が必須です。

技能比較試験のスキーム

技能試験そのものについての国際的な規格、ISO/IEC 17043があります。この規格では、技能試験提供者の組織、技能試験試料、結果の評価等について定められいます。日本食品衛生協会の技能比較試験は、この規格に基づいた組織により、適切な試料と評価報告を供給することを目指して運営されています。

技能比較試験の組織を示します。

 

(公社)日本食品衛生協会 食品衛生研究所内の事務局及びコーディネータの下に、食品の技能比較試験委員会が設置されています。技能比較試験委員会の役割は

○各年に実施する技能比較試験の回数及び評価する分析技能を議論する。

○それぞれの技能比較試験の企画書を作成する。

○それぞれの技能比較試験終了後に評価を行い、報告書を作成する。

です。技術委員会はそれぞれの技能比較試験毎に設置され、実施にあたり、技能比較試験委員会に対して、試験に適切な試料の選定と作製、均質性及び安定性の評価、結果の評価に対する専門的助言を行います。このために、技術委員会には試料作製に関わる協力者と均質性・安定性試験に関わる協力者を含めています。

第2回カビ数技能比較試験に関わる委員会の構成は以下の通りでした。

食品の技能比較試験委員会 委員長 森 曜子 (公社)日本食品衛生協会技術参与
  委員 松田 りえ子 (公社)日本食品衛生協会技術参与
  コーディネーター 井上 誠 (公社)日本食品衛生協会研究所
     化学試験部部長
第2回カビ数技術委員会(技能比較試験委員会メンバー+専門委員)
    高鳥 浩介 NPO 法人カビ相談センター代表
    法月 廣子 日本マイコトキシン学会幹事
    丸山 弓美 (公社)日本食品衛生協会
     微生物試験部

さらに、ISO/IEC 17043の序文では、技能試験の目的の一つとして、「比較の結果に基づく参加試験所の教育」が挙げられています。これを踏まえて、技能比較試験の終了後に、参加者の教育と技能向上を目的としたフォローアップ研修を行いました。

 

食品の技能比較試験カビ数第2回(2016年11月)の概要

試験内容 試験項目 カビ数(麩1 個当たり)
  試験方法 平板培養法
  評価方法 ロバスト平均及び標準偏差に基づくz-スコア
試料 麩 105 〜106 CFU/個  
  Penicilliumの胞子液を麩の表面に接種し、乾燥させて調製した。)

それぞれの試料のカビ数の変動が、技能比較試験結果に影響を与えない程度であることを確認するために、均質性試験を実施しました。

作製した試料120個から乱数表に従って、10個の試料を選択し、カビ数を測定しました。均質性試験から得られた標準偏差は0.07でした。微生物試験結果の対数の室間再現性は0.25程度と言われおり、0.07という標準偏差は結果に影響しないと考えられたため、この試料を採用しました。

技能比較試験スケジュール

試料配付 11月4日 結果提出締切 11月22日 最終報告書配付 1月10日

技能試験結果

35カ所の参加機関から報告されたカビ数(CFU/個)の対数のヒストグラム、平均及び標準偏差を示します。

ヒストグラムには2峰性が見られました。標準偏差は0.87、ロバスト標準偏差は0.85で、第一回よりも大きくなりました。培地への接種方法は、混釈法を採用した試験所が10カ所、それ以外の方法が25カ所でそのうち23カ所は塗抹法を採用していました。培地接種方法で分類したヒストグラムを次に示します。上が混釈法、下が混釈法以外の方法を用いた試験所の結果です。混釈法以外の方法のヒストグラム(下)は、中心付近の頻度が高く、ほぼ対称な分布を示しました。混釈法の結果の平均は、混釈法以外の平均よりも1.7小さく、2つは異なる分布と考えられました。

第1回カビ数の技能比較試験ではこのような接種方法による分類ができず、標準偏差が大きくなったため、z-スコアによる評価を行いませんでした。今回の技能比較試験では、混釈法以外の方法を採用した機関のロバスト平均とロバスト標準偏差からz-スコアを計算しました。z-スコアのバーチャートを下に示します。

25試験所中、z-スコアが-3〜3の範囲外(不満足)となった試験所はなく、-2〜2の範囲外(疑わしい)となった試験所は4試験所ありました。同じロバスト平均値とロバスト標準偏差の値を用いて、混釈法を採用した試験所の結果からz-スコアを計算すると、全てのz-スコアが負の値となり、3カ所の試験所が-2以上のz-スコアとなりましたが、-1〜0となった試験所も2カ所ありました。

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フォローアップ研修 (プログラム、アンケート結果等)

前述のように、本技能比較試験は参加者の教育と技能向上を目的としたフォローアップ研修を実施します。食品の技能比較試験カビ数第2回のフォローアップ研修は、2017年2月10日に行われました。受講者は30名で、17名は技能試験参加者、13名は不参加者でした。研修内容を示します。

T 開 会
    挨 拶 公益社団法人日本食品衛生協会 技能比較試験委員会委員長  森 曜子

U 研 修
  1.第2回 カビ数技能比較試験結果の概要 公益社団法人日本食品衛生協会 松田 りえ子
  2.カビ数技能比較試験条件等の集計結果について 公益社団法人日本食品衛生協会 丸山 弓美
  3.カビの試験について NPO法人カビ相談センター 高鳥 浩介

1.第2回 カビ数技能比較試験結果の概要では、技能比較試験結果に加えて、ロバストな統計量、z-スコアの統計的な意味が説明されました。

2.カビ数技能比較試験条件等の集計結果では、参加試験所が採用した試験条件等の集計結果が紹介されるとともに、試料調製方法、培養等について画像を示しながら解説されました。

3.カビの試験についてでは、カビ数試験の各段階の操作の注意点が説明されました。今回の技能比較試験で明らかになった、塗抹法と混釈法で差が現れることについて、その原因と留意すべき点が詳細に説明されました。

アンケート結果

フォローアップ研修時に、研修内容に対するアンケートを実施しました。
研修会の内容についての質問では、

非常に良かった 11 良かった 10 普通 3
少々不満  2 無回答  9    

の回答があり、以下のような意見が寄せられました。

  • 公定法でなく独学で行っている部分が多いので、今回のセミナーで解決できた点が多かった。
  • わかりやすく、また業務に活かせる内容だった。
  • カビの同定の勉強はよくやっていたが、カビ数について勉強不足だったから。
  • 普段の培養方法の確認が出来て良かった。
  • 各検査機関が行っているカビ数検査の方法が、微妙に異なっていることが興味深い。
  • 当社では混釈での培養をしていたが、塗抹をすべきかと思った。
  • 試験結果についての見解を知る事が出来た。
  • 菌検査初心者だったので、前半のお話しが少し難しかった。後半のお話はよくわかりやすかった。

また、今後の研修会への要望として

  • 食品とカビ、食品から分離されるカビについて、環境測定のポイント、浮遊カビ測定とその評価のポイントなどを題材として取り上げて頂きたい。
  • カビ数の技能試験の回数を増やしてほしい。
  • カビ数の技能試験は開発途上のように感じた。結果の集計を見ても、参加費が高額であると感じる。
  • 出来るならシリーズ化して修了証のようなものを出してほしい。

の意見がありました。これらのご意見を参考に、今後も技能比較試験とフォローアップ研修を継続してまいりたいと思います。