食品衛生研究所は、食品・化粧品・医薬品等に関する微生物、理化学試験検査を行う、厚生労働大臣登録検査機関です。

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食品の技能比較試験 (平成28年 第1回 カビ数) 結果

公益社団法人日本食品衛生協会 食品衛生研究所は、平成28年度より食品の技能比較試験事業を開始いたしました。本技能比較試験は、外部の有識者により構成された技能比較試験委員会および技能比較試験技術委員会の助言を得て開発され、国際規格ISO/IEC 17043(技能試験に対する一般要求事項)に基づく、国際的にも適切であると認められる技能試験スキームを目指し、運営しております。

技能比較試験の第1回のラウンドとして、カビ数を取り上げました。カビは食品衛生において重要ですが、その試験法は標準化されていない状態で、標準品あるいは標準試料もなく、検査者が検査結果が正しいのかどうかを確認することが困難な状態にあります。そのため結果の正しさを証明する手段の一つとして、技能試験を提供することが重要と考えました。第1回の結果は、カビ数の報告値の対数が、3.18から5.81の範囲で、最大値は最小値の400倍以上(整数値)という変動の大きい結果となり、技能比較試験の必要性が改めて確認されました。

このような大きな変動があることの原因は、検査者の技能にばらつきが大きいことも1つの要因と考えられますので、技能比較試験終了後にフォローアップ研修を行い、カビ数試験におけるそれぞれの操作の意義、注意点等の講義も行いました。

ここでは、第1回カビ数技能比較試験の

を紹介します。

技能比較試験の今後の予定

現在、2回目のカビ数技能比較試験が進行中です。また、食品の技能比較試験 (平成29年 第1回 栄養成分)を企画中です。詳細は、こちらをご覧ください。

技能比較試験のフレーム

技能比較試験の意義

食品の国際規格であるCODEX文書の、CAC/GL27(1997)”Guidelines for the Assessment of the Competence of Testing Laboratories Involved in the Import and the Export of Food”では、食品の輸出入に係る試験所の要件として、以下の4つの項目が挙げられています。

○ISO/IEC 17025 に適合している

適切な技能試験に参加している

○妥当性確認された方法を用いる

○内部品質管理を実施している

また、ISO/IEC 17025 ”General requirements for the competence of testing and calibration laboratories”においても、5.9 試験 ・校正結果の品質の保証 :5.9.1の試験 ・校正の有効性の監視のため品質管理手順の一つとして、「試験所間比較又は技能試験プログラムへの参加」を挙げています。

このように、試験結果を国際的に保証するためには、技能試験への参加が必須です。

技能比較試験のスキーム

技能試験そのものについての国際的な規格、ISO/IEC 17043があります。この規格では、技能試験提供者の組織、技能試験試料、結果の評価等について定められいます。 (公社)日本食品衛生協会の技能比較試験は、この規格に基づいた組織により、適切な試料と評価報告を供給することを目指して運営されています。

つぎに技能比較試験の組織を示します。

 

(公社)日本食品衛生協会 食品衛生研究所内の事務局及びコーディネータの下に、食品の技能比較試験委員会が設置されています。技能比較試験委員会の役割は

○各年に実施する技能比較試験の回数及び評価する分析技能を議論する。

○それぞれの技能比較試験の企画書を作成する。

○それぞれの技能比較試験終了後に評価を行い、報告書を作成する。

です。技術委員会はそれぞれの技能比較試験毎に設置され、実施にあたり、技能比較試験委員会に対して、試験に適切な試料の選定と作製、均質性及び安定性の評価、結果の評価に対する専門的助言を行います。このために、技術委員会には試料作製に関わる協力者と均質性・安定性試験に関わる協力者を含めています。

第1回カビ数技能比較試験に関わる委員会の構成は以下の通りでした。

食品の技能比較試験委員会 委員長 森 曜子 (公社)日本食品衛生協会技術参与
  委員 松田 りえ子 (公社)日本食品衛生協会技術参与
  コーディネーター 井上 誠 (公社)日本食品衛生協会研究所
     化学試験部部長
第1回カビ数技術委員会(技能比較試験委員会メンバー+専門委員)
  専門委員 高鳥 浩介 NPO 法人カビ相談センター代表
  専門委員 小高 秀正 (公社)日本食品衛生協会研究所
     微生物試験部部長
  試料作成協力者 高鳥 美奈子 NPO 法人カビ相談センター
均質性・安定性試験協力者 丸山 弓美 (公社)日本食品衛生協会研究所
     微生物試験部

さらに、ISO/IEC 17043の序文では、技能試験の目的の一つとして、「比較の結果に基づく参加試験所の教育」が挙げられています。これを踏まえて、技能比較試験の終了後に、参加者の教育と技能向上を目的としたフォローアップ研修を行いました。

 

第1回カビ数技能比較試験の概要

試験内容 試験項目 カビ数(麩1 個当たり)
  試験方法 平板培養法
  評価方法 ロバスト平均及び標準偏差に基づくz-スコア
試料 麩 105 〜106 CFU/個  
  Penicilliumの胞子胞子液を麩の表面に接種し、乾燥させて調製した。)

それぞれの試料のカビ数の変動が、技能比較試験結果に影響を与えない程度であることを確認するために、均質性試験を実施しました。

作製した試料120個から乱数表に従って、12個の試料を選択し、カビ数を測定しました。均質性試験から得られた標準偏差は0.07でした。微生物試験結果の対数の室間再現性は0.25程度と言われおり、0.07という標準偏差は結果に影響しないと考えられたため、この試料を採用いたしました。

技能比較試験スケジュール

試料配付 6月6日 結果提出締切 6月22日 最終報告書配付 8月1日

技能試験結果

40カ所の参加機関から報告されたカビ数 (CFU/個)の対数のヒストグラム、平均及び標準偏差を示します。

 

ヒストグラムが二峰性を示しており、結果が正規分布するとは考えられませんでした。また、標準偏差は0.70、ロバスト標準偏差は0.76となり、微生物試験結果を常用対数化した際の一般的な室間再現性といわれている0.25の3倍となりました。以上のことから、ロバスト平均及び標準偏差に基づくz-スコアでの評価は行いませんでした。

参加機関が試験を実施していると思われる時期に実施した、試料の安定性試験結果 (CFUの対数)の平均値は5.11でした。この値を参照値とし、微生物試験結果を常用対数化した際の一般的な室間再現性といわれている0.25を標準偏差として計算すると、z-スコアが-2〜2となるカビ数は、4.61〜5.61、-3〜3となるカビ数は4.36〜5.86となりました。一般的に、技能試験結果のz-スコアが-2〜2の範囲にあればその試験所の能力は十分と評価され、-3未満あるいは3を超える場合には能力に問題があると評価されます。仮に、上記の方法で計算したz-スコアを指標とするならば、3.18〜4.32の範囲のカビ数の常用対数を報告した参加機関はz-スコア<-3ということになり、原因を究明して正しいカビ数を測定する方法を確立することが推奨されます。

参加機関が用いた手法、培地などの条件は多様でしたが、z-スコアとの明らかな関係は認められませんでした。カビ数試験法は標準化が進んでおらず、自分の結果の正当性について評価が難しい試験です。技能試験の目的の 1つとして、「試験所における問題点の特定及び改善処置の開始」があります。技能試験に参加することで、カビ数の結果が妥当であることの判断が可能になります。

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フォローアップ研修 (プログラム、アンケート結果等)

前述のように、本技能比較試験は参加者の教育と技能向上を目的としたフォローアップ研修を実施しております。第1回カビ数技能比較試験のフォローアップ研修は、平成28年8月26日に行われました。受講者は41名で、25名は技能比較試験参加者、16名はフォローアップ研修のみの参加者でした。研修のプログラムを示します。

T 開 会
  挨 拶 公益社団法人日本食品衛生協会 技能比較試験委員会委員長 森 曜子

U 研 修
  1.第1回 カビ数技能比較試験結果の概要 国立医薬品食品衛生研究所 松田 りえ子
  2.カビ数技能比較試験条件等の集計結果について 公益社団法人日本食品衛生協会 丸山 弓美
  3.カビの試験について NPO法人カビ相談センター 高鳥 浩介

U-2.「カビ数技能比較試験条件等の集計結果について」では、技能比較試験時に配布された試験条件等の質問用紙の回答の集計結果が説明されるとともに、試料調製方法、培養等について寄せられた質問、参加者が試験結果を確定する時に困った点などについて、イラスト付きで解説されました。

U-3.「カビの試験について」では、カビ数試験の各段階の操作における注意すべき点が、カビの性質に基づいて詳細に説明されました。

アンケート結果

 フォローアップ研修時に、研修内容に対するアンケートを実施しました。 研修会の内容についての質問では、

非常に役に立った 16 まあまあ役に立った 10
役に立った 9 あまり役に立たなかった 1
役に立たなかった 0 無回答 4

の回答があり、以下のような意見が寄せられました。

  • 見直す点がはっきりと確認できた
  • 試験結果の解釈、今後の検査体制の向上に向け、有益な情報が得られた。
  • 今後カビの検査が必要になってくるものの、今まであまりカビは検査したことがなかったため、影響を及ぼ要因等を聞けて良かった
  • カビの試験法について確認したかった。他社の状況を知る事が出来て良かった。出来れば公定法や指針の解釈の聞きたかった。
  • 他の検査機関の実施状況の情報がわかった
  • カビ検査について、具体的な方法、注意点を学ぶことができた
  • 試験結果についての見解を知る事が出来た
  • 初心者なのでためになった話もあったが、検査手順等をしっかり説明して欲しかった
  • 試料の不安定さが際立った。各検査機関の検査方法、精度が妥当かは今後の展開による。
  • 正確な試験結果を出すためには、偏りをできるだけ少なくできるような条件を整えることが大切だということがよく分かった。
  • 測定方法が統一されていなくて驚いた

また、今後の研修会への要望として

  • 実際に精度管理運営する人が知りたい統計、集計のやり方について教えてほしい
  • 具体的な検査方法、カウント方法 (ケースバイケースでの)など、実践的な部分を取り入れてほしいです。
  • 他の微生物試験でも、フォローアップ研修等でコツなどを教えて頂きたい
  • 今回のような会を希望します
  • 講演以外に普段から疑問に思っていることを質問できる機会があるといい
  • これからも技能試験→フォローアップ研修会の流れでやってほしい
  • 食品衛生検査指針に沿った検査について、議論していただきたい
  • 日本や世界の検査方法のトレンドなどを扱ってほしい
  • 一般的な検査方法や培地について知りたい

これらのご意見を参考に、今後も技能比較試験とフォローアップ研修を継続してまいりたいと思います。